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2007年11月

『42.195キロへの挑戦』

 先日開催された東京国際女子マラソンで、アテナ五輪金メダリストの野口みずきが大会新記録で優勝しました。北京五輪代表入りは確実ということなので、是非連覇して貰いたいものです。現在は女子の強さが目立っていますが、以前マラソンと言えば男子だった。瀬古、中山、宗兄弟たちが世界中の大会で活躍し、五輪の金メダルがないのは不思議なぐらい。

 彼らの活躍もあり、市民ランナーが増えマラソンブームも起きていた頃に出版(1984年)されたもの。著者は、松島駿二郎・生和寛。

 副題は「あなたも一年でフルマラソンが走れる!!」。オリンピックや世界選手権と同じ42.195kmを走りきれる体力を、一年間で身につけるプログラムを紹介しています。それも楽しみながら。もちろん対象は一般の市民ランナーです。

 トレーニング方法は、毎週、少しずつ走る時間を長くしていき、一年後にフルマラソンを完走できる力をつけるというものです。一週間のうち日曜日は他より長時間、水曜日だけはお休み。無理なく気楽にがモットーで、初日のノルマは速足でたった5分間歩くだけ。近くの、コンビニへ行くより短い時間です。

 第1週は、速足のみ。第5週でも最大18分しか走りません。第22週の日曜日でやっと1時間。第42週で2時間、第49週でついに最長時間となる3時間を走ります。第52週が終わる頃にはフルマラソンを走りきれるようになっているというぐあい。

 実際にやってみたのですが、最初のうちは楽々でトレーニングなのかなんだかわからないくらい。1ヶ月経っても30分も走らないから、物足りなくなります。順調に走る時間を延ばしていき、半年も経つと1時間くらい苦も無くスイスイ。しかし、32週目で挫折。走る時間が長くなったからではなく、真夏の暑さに負けた。夕方でも気温が高かったので、一度中断して秋になったら再開しよう、と思ってそのままに。

 それでも1時間半くらいなら息切れしないで走れるようになりました。

 これからフルマラソンにチャレンジしたいと思っている人にお薦めなのですが、惜しいことに絶版です。十分需要はあると思うのですがね。

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『点と線』

 テレビ朝日の開局50周年記念企画として初ドラマ化され、今月の24、25日に二夜連続で放送される松本清張の大ベストセラーです。1957年から1958年にかけ雑誌に連載され、同年に出版ならび映画化されました。新書版は1960年7月発行で9ヶ月後の1961年4月で14版になっていることからも、当時かなりの一大ブームを巻き起こしたことがわかります。

 あらすじは・・・

 福岡県の海岸で男女の死体が発見され、状況から無理心中と思われます。しかし、とある物証から一片の疑念を抱いた福岡署の鳥飼刑事は、単独で捜査を始めるのであった。

 有名な東京駅の4分間トリック、日本中を駆け巡る容疑者、時刻表を使ったアリバイと見所はたくさんあります。とはいえ、長嶋さんが巨人入団や東京タワー竣工の頃に書かれたもの。半世紀前の作品がいまだに表舞台に立てるのは、すごいですよね。

 ほんの数年で絶版になってしまう本もあれば、何世紀にも渡って読み継がれていくものもあります。推理小説で言えば、エラリー・クイーン、アガサ・クリスティ、江戸川乱歩、そして松本清張。共通して、トリックの面白さだけではなく、時代を越えて訴求しうる人間のドラマを持っているのではないかな。

 ショウペンハウエルは、その著書『読書について』(1851)の中で、粗製濫造される悪書などに無駄な時間を使わずに良書、とくに古典を読めと訴えています。それはそれで正しいと思う。でも、将来古典になるような現代の作品にも出会ってみたいものです。

 ドラマで主役の鳥飼刑事を演じるのはビートたけし。地方のベテラン刑事をどう演じるかも楽しみ。

点と線―長編推理小説 (カッパ・ノベルス (11-4)) Book 点と線―長編推理小説 (カッパ・ノベルス (11-4))

著者:松本 清張
販売元:光文社
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『夢見る惑星フォルゴ-ン』

 デュマレスト・サーガ第二弾(著者はE・C・タブ)。故郷の惑星「地球」を求め宇宙をさすらい、今は空に浮遊獣が飛び回る惑星カイルに滞在中です。前作から、実に7つ目の惑星。

 今回は、シリーズの重要な要素となっている宇宙船の設定を紹介します。他のSF小説に登場する宇宙船と違い、この世界の宇宙船は、超光速で飛べても「ワープ」はできません。銀河の端から端へひとっ飛びなどという芸当は不可能、惑星間の往来さえ月や年単位の時間が必要とされます。

 長すぎる航行時間を減らす方法は2つ。金持ちは、高価な「低速代謝薬」を飲み、動きと老化と体感時間を数十分の一にして旅を楽しむ。貧乏人は、90%死んだ冷凍状態で冬眠容器の中へ。安いだけあって15%の死亡率というリスク付き。普通の時間を過ごしているのは原則として船員だけ。

 冷凍状態で移動、さらに超光速で飛ぶ宇宙船。デュマレストが地球を10歳で旅立ってから、実時間では何世紀も過ぎ去っています。

 時間を操作し行動を制限する上手い設定。これで「地球」捜しの困難さを増すことに成功しています。

 さて、惑星カイルでは見世物小屋で働いていたデュマレスト。仕事が一段落したときに、御指名で依頼が舞い込んできます。請け負ったのは、名家の令嬢デライを、その故郷である惑星ハイヴまで護衛すること。実は、デライは生まれながらの超能力者。惑星ハイヴに着いてみれば、次期家長の座を巡る抗争の真っ最中・・・。

 揉め事には首を突っ込みません。金稼ぎでドデカイ蜂さんと戦ったりします。でも、結局は権力闘争に巻き込まれることに・・・。デライには惚れられるし・・・。

 ここからネタバレ注意。超能力ゆえ孤独を味わってきたデライとデュマレストは、ちょいといい関係になります。しかし、このシリーズには「愛した女は死んでいく」という恐ろしいジンクスが。ま、どのみち渡り者は一人になるのさ。

夢見る惑星フォルゴーン<デュマレスト・サーガ2> Book 夢見る惑星フォルゴーン <デュマレスト・サーガ2>

著者:E.C. タブ
販売元:東京創元社
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『「描写文」の訓練で力をつける』

 描写文の書き方を、小学生に教授する方法についての本です。自分の文章を見直しがてら読みました。同著者による言語技術実践シリーズの一冊。

 著者の三森ゆりかは、小学生から高校生に、言語技術教育を行っている「つくば言語技術教室」主宰です。教室では、ドイツの言語技術教育を参考にして作られたカリキュラムが使われていて、本書はそれが元になっています。

 描写文を、情景を客観的に伝える「科学的記述文」と、書き手の心情をも伝える「文学的記述文」に分けて考えていて、本書では全ての描写文の基礎とされる「科学的記述文」を取り上げています。文学的な文はほとんど扱っていません。目指すは、対象を客観的かつ正確に表現し、読む人が目に見えるように伝えられる文章です。

 教材は「人物描写」「動物の描写」「物の描写」「絵の描写」「描写の技術」に分けられ、それぞれ学年に応じて難度を上げています。描写文から情報を抜き出させたり、情報を与え描写文を書かせたりしながら、順を追って描写の技術を教えていく。最後には一枚の「絵」を描写させるまでに発展します。

 教えている描写の技術自体は別に変わったものではありません。詳細に観察し、情報の重要度を吟味し、別の物と対比して、方向軸はぶらさない。全て描写の基本的な事柄であり、その辺の文章読本にも書いてあるようなこと。

 でも、これだけのことを小学生の段階で習得させることが出来たら、すごいですよね。

 小学生の頃、学校の作文指導で描写の訓練を受けた憶えはまったくありません。そもそも、書いた文書の量もそれほど多くなかった。記憶に残っているのは、長文だと、読書感想文や遠足の次の日に書かされた感想くらい。おかげで後々苦労することに。ほんと、これくらいのことは教えておいて欲しかったよ。

Book 「描写文」の訓練で力をつける (言語技術実践シリーズ)

著者:三森 ゆりか
販売元:明治図書出版
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『銀河帝国の興亡 1』

 ファウンデーション・シリーズは、銀河帝国の滅亡から新帝国勃興までを壮大なスケールで描き出した、アイザック・アシモフのSF一大叙事詩です。本書はその記念すべき第一作で、原題は『FOUNDATION』(1951年出版)。題名が、創元推理文庫では『銀河帝国の興亡 1』(絶版)、現在のハヤカワ文庫では『ファウンデーション-銀河帝国興亡史』となっています。

 まずは、本書のさわりを・・・

 一万二千年もの長きに渡り全宇宙を支配してきた大銀河帝国。二千万五百万の惑星を統治下に治め、人口は1000兆人を越え繁栄の真っ只中。しかし、崩壊の序曲はすぐそこまで忍び寄っていた。心理歴史学による探求の結果、帝国はあと五世紀以内に瓦解するとの結論を得た数学者のハリ・セルダンは、とある計画を実行に移すのであった。

 心理歴史学というのは、個人の動きは予測できなくとも、大集団の行動・未来は統計的に予想できる学問、という設定です。帝国の崩壊は不可避と見切ったセルダンは、崩壊後の暗黒時代を3万年から1千年に短縮するために、人類の叡智・知識を全て集めるファウンデーションの設立に取り掛かります。

 セルダンの立てた計画に沿って、何世紀にも渡る物語なので、話が進むに従って登場人物もどんどん変わっていく。セルダン自身、生きているのは最初だけで、その後は時々ホログラムでお告げを告げます。

 登場するのは人類のみ。肌もあらわな異星の美女や、感情移入してしまうヒーロー、奇怪な面妖の宇宙人は出て来ません。そのかわり、権謀術数を張り巡らせる政治家、計画実行のために暗躍する集団、権力欲に塗れた者や、宗教関係、etc・・・。

 銀河を跨ぐ広大な世界に、何世紀にも渡る悠久の歴史、このスケールの大きさが魅力のシリーズです。そして、時代をおいて降りかかるファウンデーションの危機に対する各世代の努力が新帝国の歴史を作り上げて行く面白さ。

 シリーズは全7冊。うち本書を含む1950年代に出版された3冊が初期三部作と呼ばれています。4冊目以降は、1980年代に入ってからの出版。晩秋の夜長にはピッタリの長編SF叙事詩です。

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『初期捜査の実際』

 時津風部屋で新弟子が死亡した問題について、先月の終わり愛知県警が初動捜査時の判断ミスを認める見解を発表しました。過去にも、坂本弁護士一家殺害事件のように初動捜査のミスが大事件に発展したり、迷宮入りになったこともあります。初動捜査って大切なんですね。それで思い出した一冊。

 40年を越える警察人生を送り、警察大学校の講師も勤めた綱川政雄・元警視正が、初期捜査における基本的な捜査方法や注意事項、着意点などを解説しています。出版社は、警察関連分野を専門にしている立花書房です。

 章立ては、「初期捜査とは何か」「現場鑑識」「現場保存」「現場周辺の捜査」の4章。一般向けの教養書では無く、後進への捜査技術の伝授を念頭に書かれたものなので、叙述は教科書みたいに堅苦しく、中身はかなり濃い。例えば、「現場付近の聞込み」だけで、聞き込む内容からその相手、要領まで16ページに渡り詳細に解説しています。一部引用してみると、

 深夜の事件で現場付近に通行人や見物人が居ない場合は、犯行前後に犯人らしい者を目撃した相手を捜すということになる。深夜営業の飲食店とか屋台店などは、犯行の前後に犯人が立寄る場合もあるだろうし、そこの客が犯人を目撃する機会もある。また、早朝の通行人、駅員・・・

 極めて実戦的です。さすが長年に渡り犯罪者を追い続けていただけあって、説得力も違う。ドラマや映画とは別の世界を垣間見れ、読み進めていくうちに気分は犯人を捜す警察官に。

 ただ、20年以上前(1984年)の出版のため古さを感じさせるところもあります。当時、存在しなかったNシステムをはじめ新しい機器については載っていません。

 ミステリ小説や警察小説もいいですが、この手の硬い本で現実の犯罪捜査を知るのもおもしろいものですよ。

 *「立花書房ホームページ

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『毒物雑学事典』

 ミステリの世界において毒物は重要な小道具として登場します。なかでも、ミステリの女王アガサ・クリスティーは薬剤師として働いていた経験とその知識を生かし、作品のなかで毒物を多用しています。『ポケットにライ麦を』ではタキシンと青酸カリ、『三幕の殺人』のニコチン、『火曜クラブ』の砒素と使われた毒物もさまざま。

 現実の世界でも、戦後の混乱期を揺るがした帝銀事件をはじめとして、多くの事件で毒物は使われました。

 毒物が問題になるのは、なにも犯罪に限ったことではありません。異なるタイプの洗剤を混ぜたばかりに猛毒の塩素ガスが発生してしまった風呂場での事故や、有機水銀が引き起こした水俣病。蜂に刺されて痛い思いをするのも毒によるものです。かように世の中は毒物で満ち溢れているのです。怖い怖い。

 本書は、そんな毒物のあれこれを90の話で説明しているブルーバックス・シリーズの一冊(1984年)。1話あたり見開き2ページと、短くまとまっていて気軽に読めます。著者は、元・信州大学教授の大木幸介。

 主に毒物の作用、つまり人体のどの部分に何故その毒が影響を与えるのかについて解説しています。他に、各種毒物の発見された歴史や毒物による事件、薬として使われている毒など興味深い雑多な知見も。

 毒の作用といっても一般向けなので、難しい化学式や数式の羅列はありません。例えばミツバチの毒の作用について書かれたところを引用してみると

 ミツバチの小型タンパク質毒をみると、メリチン、アパミン、MCDペプチドなどが主要成分である。
 メリチンには強い溶血作用がある。アパミンは中枢神経をまひさせる毒だ。MCDペプチドには、マスト細胞という特別な白血球を破壊するため・・・

 と、なっています。基礎知識を得るには十分でしょう。

 もともとはミステリの延長線上で読みました。毒物について知っておけば推理に役立つかと。しかし、世のミステリはそれほど甘くはなかった。毒物の知識が少々増えた程度では、真犯人を発見するまではなかなか・・・。名探偵への道は遠い。

毒物雑学事典―ヘビ毒から発ガン物質まで (ブルーバックス (B‐569)) Book 毒物雑学事典―ヘビ毒から発ガン物質まで (ブルーバックス (B‐569))

著者:大木 幸介
販売元:講談社
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『住まいの修理の手帳』

 水道の蛇口からポタンポタンと滴り落ちる水滴、ほんのちょっとした不注意から破いてしまった障子、長年風雨に晒され錆が浮き始めた門扉。生活するうえで支障はないとはいえ何かと気になってしまうもの。でも、業者さんを呼んで修理してもらうと、それなりに費用が掛かってしまう。それも「工賃5000円~(部品代別)」なんて書かれていて幾ら掛かるか分かりづらい。

 そんな住まいのあれこれを自分で修理・メンテナンスしてしまおうという本です。監修は日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会参与の西沢正人。

 住まいのトラブルを「水回り」「建具」「床」「家具・家電製品」「塗装」の5つに分けて、修理方法をやさしく解説しています。「水回り編」だけを見ても、水栓器具からの水漏れ修理、シングルレバー・ツーハンドル混合水栓の交換方法、トイレの水が出ない止まらないときの修理、詰まったときの対応方法と、幅広く載っています。各ページ、図(イラスト)が6割、文が4割くらいと、図を多く載せているので初心者にもわかりやすい。また、素人でも修理出来るように道具の使い方から教えてくれます。

 水栓器具やドア錠など、修理対象の分解図と各部品の名称をきっちり載せている所もよい。部品の名称がわからないとホームセンターで買い物するときも不便なのです。名称がわからないばっかりに「トイレのタンクの中に入っている丸っこくて浮いてるの」とか「水栓器具の真ん中に通っている棒状のやつ」って説明するはめに。わかっていれば「トイレの浮き玉下さい」「水栓器具のスピンドルありますか」と簡単に済みます。

 もちろん実際に修理してみると、書いてあるほど容易にはいきません。ボルトやナットが恐ろしく堅く締まっていたり、古いタイプの水栓器具のため部品が無かったりと、いろいろ苦労することもあります。おまけに折角買った道具がその後、一度も使われなかったりすることも。

 それでも、自分で修理するのは面白いものです。業者の仕事だったらクレーム物の塗装のムラや、網戸の網のたるみも自分でやったのなら許せてしまう。

 まだまだ失敗も多い素人修理をするときに、手元に置いある一冊です。

住まいの修理の手帳 (早わかりガイド) Book 住まいの修理の手帳 (早わかりガイド)

著者:西沢 正人
販売元:小学館
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『鏡は横にひび割れて』

 英国が生んだミステリの女王アガサ・クリスティーの作品です。登場する探偵はミス・ジェーン・マープル。すでにマープル「おばさん」と呼ばれる歳は過ぎ去り、健康を案じる主治医から庭仕事を禁止されている「お婆さん」になっています。犯罪の舞台となるのは、マープルの地元であるロンドン郊外の小さな村、セント・メアリ・ミード。

 まずは、事件が起こるまでを・・・

 時代は流れ、セント・メアリ・ミードにも変化の波は押し寄せてきた。昔の面影を残すのは中心部の一角くらい。商店街にはスーパーが建ち、牛が放牧されていた野原は新興住宅地に生まれ変わってしまった。街だけでなく人も。そして新しい住人がまた一人。

 ゴシントン・ホール(お屋敷)を往年のハリウッド女優マリーナ・グレッグが購入したことはすぐに村中に知れ渡った。マリーナは静かな環境を求め居を構えたとのこと。数日後、ゴシントン・ホールで野戦病院協会の募金集めのパーティが開催された。改装されたお屋敷と、女優見たさに多くの村人が訪れるなか、お屋敷の一角では地域の有力者を集め歓談が。そこで招待客のひとりがグラスに毒を盛られ殺害されてしまう。被害者は、今催事の幹事バドコック夫人。おせっかいなほど親切で、人から恨みをかうとは到底思えない婦人であった・・・

 ここからネタバレ気味なので注意!

 闇に覆われた人生、癒されることがない苦しみ、その原因を作った張本人が姿を現したら、それも笑顔で。止めることのできない衝動に駆られてとった行動が悲劇の連鎖を生んでいく。

 人を殺すにはそれなりの理由ってものがあります。金銭目当てであったり、愛憎が絡んでいたり、はたまた国家の機密を守るための口封じに。もちろん今回の犯人にもそれなりの動機があります。動機が動機だけに本作品は悲劇といえるでしょう。そして、それは現実でも起こりうる悲劇なのは怖い。

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