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2010年4月

『日本の安全保障』

 迷走に迷走を重ねる普天間の米軍基地移設問題、昨年から延々と政府による再検討が続いているのに未だ出口が見えてきません。この間、グアムや硫黄島など、海外や国内の候補地が浮かんでは消えていきました。最近の論調では、県内移設案が有力になっているように思えます。

 本書の発刊は1997年。当時、日米ガイドライン見直しが議論され、辺古野沖移設案もこの年に出されました。著者は江畑謙介。言わずと知れた軍事評論家です。

 第一章は「冷戦後の米世界戦略」、最初から意外な展開です。門外漢が日本の安全保障と聞くと、まずは日米安保や自衛隊云々を思い浮かべてしまう。しかし冷戦後米国だけが超大国として残った現在、著者の弁によれば「いかなる国においてもその安全保障を考え論じる際には、まず米国の世界戦略に対する客観的理解が不可欠」とあります。安全保障は相手があってのこと、自国の価値観だけを振り回す一人相撲は意味をなさないともあります。

 第二章では日本の生命線といえる「タンカー航路の危険」を、第三章で「東アジアにおける三つの不安定要因」として、不安定な半島、中国の軍拡、ロシアの太平洋進出を取り上げ、その後の章でやっと日米安保関連について述べています。

 著者は、ひたすら客観的事実を重ねて解説するというスタイルを取っています。また、一般には馴染みの薄い軍事の事柄も詳しく説明しているのでわかりやすい。丁度、「良い教科書」みたいな解説書です。

 本書によって、日米安保の周辺国への影響や、基地移転の際のインフラ問題、日本そして沖縄の戦略地理的価値を教えられると、民主党や社民党が唱えていた海外移転が軍事的な視点を欠いたものに見えてきます。もちろん軍事的な視点だけで普天間の問題が解決することはないでしょう。沖縄県民の負担軽減や環境、経済といった視点も大切です。しかし、軍事基地の移転問題が軍事的な視点無しに解決するとも到底思えません。

 鳩山総理が決めた五月末の期限まで残り二ヶ月弱、これだけ軍事が絡んだ問題がクローズアップされているときに、著者の軍事視点の解説を聞けないことは本当に残念です。

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